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  • 後見人ができること・できないこと完全一覧

    後見人ができること・できないこと完全一覧

    「後見人って、どこまでやってくれる人なんですか?」
    「身の回りの世話も全部お願いできると思っていました」

    成年後見制度について、このような誤解や疑問は非常に多く寄せられます。

    実際の現場では、

    • 後見人に頼んだら断られた
    • 施設や病院との認識が食い違った
    • 「そこまでやる義務はない」と言われて困った

    といったトラブルも少なくありません。

    この記事では行政書士が、

    • 後見人が法的にできること
    • 後見人がやってはいけないこと
    • 現場でよくある具体例(おむつ・洗濯など)

    を整理し、

    「どこまでが後見人の役割なのか」を分かりやすく解説します。


    成年後見人の基本的な役割とは

    成年後見人の役割は、大きく分けて次の2つです。

    • 財産管理
    • 身上監護

    ここで注意したいのは、

    「身上監護 = 介護や世話そのもの」ではない

    という点です。

    後見人は、
    生活を“支えるための法律行為・契約行為”を行う立場であり、


    直接的な世話係ではありません。


    後見人が「やっていいこと」一覧

    ① 財産管理に関すること

    • 預貯金の管理・支払い
    • 年金・給付金の受領
    • 公共料金・医療費・施設費の支払い
    • 不必要な契約の解約

    これは後見人の中核業務です。

    ② 身上監護に関する「契約・調整」

    • 介護サービス契約の締結
    • 施設入居契約の手続き
    • 医療機関との連絡調整

    あくまで手配・判断・契約が役割であり、
    実際の介護は事業者が行います。

    ③ 行政手続き・各種申請

    • 介護保険の申請
    • 障害福祉サービスの手続き
    • 役所への届出

    本人に代わって行う法的手続きが中心です。


    後見人が「やってはいけないこと」一覧

    ここが最も誤解されやすいポイントです。

    ① 直接的な介護・世話

    • おむつ交換
    • 入浴介助
    • 食事介助

    これらは後見人の業務ではありません。


    後見人が行うと、責任の所在が不明確になります。

    ② 家事全般

    • 洗濯
    • 掃除
    • 買い物

    「後見人=何でも屋」ではありません。

    必要な場合は、
    ヘルパー契約や生活支援サービスを手配するのが役割です。

    ③ 医療行為・医療同意

    後見人は、

    手術や延命治療への同意はできません。

    これは「一身専属性」という法律上の考え方によるものです。


    よくある現場の誤解とトラブル事例

    「おむつや洗濯を頼めると思っていた」

    施設や家族が、
    後見人に生活全般を期待してしまうケースです。

    後見人は、

    「やる人」ではなく「整える人」

    であることを理解する必要があります。

    「保証人代わりになると思っていた」

    後見人は、

    原則として身元保証人にはなれません。

    この誤解は、医療・介護現場でも非常に多く見られます。


    なぜ「できないこと」が多いのか

    成年後見制度は、

    本人の権利と財産を守るための制度

    です。

    後見人に何でも任せてしまうと、

    • 責任の集中
    • 権限の濫用
    • 本人意思の軽視

    につながる恐れがあります。

    そのため、あえて役割は限定的に設計されているのです。


    後見だけでは足りない理由

    ここまで読んで、

    「後見人だけでは生活が回らないのでは?」

    と感じた方も多いでしょう。

    実務では、

    • 事務委任契約
    • 死後事務委任契約
    • 生活支援サービス

    を組み合わせることで、
    現実的な支援体制を作ります。


    行政書士に相談するメリット

    行政書士は、

    • 後見制度の正確な説明
    • 現場で使える契約設計
    • 関係者との役割整理

    を行う専門家です。

    「どこまで頼めるのか分からない」
    「現場と話がかみ合わない」

    そんなときこそ、専門家の出番です。


    まとめ|後見人の役割を正しく知ることが安心につながる

    • 後見人は法律行為の支援者
    • 直接介護や家事は行わない
    • 「できること・できないこと」の理解がトラブル防止になる

    成年後見制度は、正しく使えば非常に心強い制度です。

    しかし、誤解したままでは、
    「こんなはずじゃなかった」という結果になりかねません。

    後見制度や将来の備えについて不安がある方は、
    どうぞお気軽にご相談ください。

    制度を現実の生活に落とし込むお手伝いをいたします。

    行政書士吉村事務所のホームペー

  • 任意後見の受任者と後見人の違いを完全整理

    任意後見の受任者と後見人の違いを完全整理

    「任意後見契約を結べば、すぐに後見人として動いてもらえる」
    「受任者と後見人って、同じ意味ですよね?」

    任意後見について相談を受けていると、
    このような誤解をしている方が非常に多いと感じます。

    実は、「任意後見受任者」と「任意後見人」は、まったく別の立場です。
    この違いを理解していないと、

    • いざという時に何もしてもらえない
    • 契約したのに役に立たない
    • 家族や医療・介護現場が混乱する

    といった事態になりかねません。

    この記事では、行政書士が

    • 任意後見受任者とは何か
    • 任意後見人とは何か
    • 両者の決定的な違い
    • 「代理権がない」という重要なポイント

    を、初めての方にも分かるように一から整理します。


    そもそも任意後見制度とは

    任意後見制度とは、

    将来、判断能力が低下したときに備えて、
    あらかじめ支援者を決めておく制度

    です。

    元気なうちに、

    • 誰に
    • どんな支援を
    • どこまで任せるか

    を契約で決めておく点が特徴です。

    ここで登場するのが、
    「任意後見受任者」と「任意後見人」という2つの言葉です。


    任意後見「受任者」とは

    任意後見受任者とは、

    任意後見契約を結んだ時点での立場

    を指します。

    まだ本人の判断能力が十分にある間は、

    • 受任者は「将来の後見人候補」
    • 実際の後見権限は発生していない

    という状態です。

    重要ポイント:代理権はありません

    ここが最も誤解されやすい点ですが、

    任意後見受任者には、原則として代理権はありません。

    つまり、

    • 預金の引き出し
    • 契約の締結・解約
    • 施設入居の手続き

    などを勝手に行うことはできないのです。

    「任意後見契約を結んだ=もう任せられる」
    という理解は、明確な間違いです。


    任意後見「後見人」とは

    一方、任意後見人とは、

    家庭裁判所によって正式に選任された後の立場

    です。

    次の流れを経て、初めて後見人になります。

    1. 本人の判断能力が低下
    2. 家庭裁判所へ申立て
    3. 任意後見監督人が選任される
    4. 任意後見人として活動開始

    この段階で初めて、

    • 契約で定めた代理権
    • 財産管理や身上監護

    法的に行えるようになります。


    受任者と後見人の違いを一覧で整理

    項目任意後見受任者任意後見人
    時期契約締結後すぐ家庭裁判所選任後
    代理権原則なしあり(契約範囲内)
    裁判所関与なしあり(監督人)
    実務対応基本的に不可可能

    この違いを理解していないと、

    「頼んでいたのに、何もできない」

    という事態が起こります。


    「代理権がない問題」がなぜ重要なのか

    判断能力が低下し始めたグレーゾーンでは、

    • 本人の同意が不十分
    • 家族がいない
    • 緊急対応が必要

    という場面が少なくありません。

    しかし、任意後見が「まだ発動していない」状態では、

    受任者は何も決められない

    のが現実です。

    この問題を補うために重要なのが、

    • 事務委任契約
    • 死後事務委任契約

    との併用設計です。


    任意後見は「単独」では不十分

    任意後見契約は非常に優れた制度ですが、

    それだけで老後のすべてをカバーできるわけではありません。

    実務では、

    • 元気なうち → 事務委任契約
    • 判断能力低下後 → 任意後見
    • 死亡後 → 死後事務委任

    という段階的な契約設計が重要になります。


    行政書士に相談するメリット

    行政書士は、

    • 制度の正確な説明
    • 誤解の修正
    • 将来を見据えた契約設計

    を行う専門家です。

    「とりあえず任意後見を作れば安心」ではなく、

    「あなたの状況に合った仕組み」を一緒に作る

    ことができます。


    まとめ

    • 任意後見受任者と後見人は別物
    • 受任者には代理権がない
    • 家庭裁判所の関与で初めて後見が始まる

    制度を正しく理解することが、
    将来の安心への第一歩です。

    任意後見について不安や疑問がある方は、
    どうぞお気軽にご相談ください。

    「知らなかった」で困らないためのお手伝いをいたします。

    行政書士吉村事務所のホームペー

  • 死後のことは後見人に頼めない?理由と対策

    死後のことは後見人に頼めない?理由と対策

    「成年後見人がついていれば、亡くなった後のこともお願いできる」
    そう思っている方は、実は少なくありません。

    しかしこれは、とても多い誤解です。

    結論から言うと、後見人は“死後のこと”を行うことができません。


    この点を理解していないと、亡くなった後の手続きが宙に浮き、周囲に大きな負担をかけてしまう可能性があります。

    この記事では、行政書士の立場から、

    • なぜ後見人は死後の手続きをできないのか
    • 後見制度の「限界」
    • 現実的な解決策として何を準備すべきか

    を、エンディング対策の視点でわかりやすく解説します。


    成年後見制度は「生きている間」の制度

    成年後見制度(法定後見・任意後見)は、

    • 判断能力が不十分な方を守る
    • 財産管理や契約行為をサポートする

    ための制度です。

    つまり、後見制度の目的は「生前の支援」にあります。

    後見は「死亡」で当然に終了する

    法律上、成年後見契約は、
    本人が亡くなった時点で当然に終了します。

    これは法定後見でも任意後見でも同じです。

    そのため後見人は、

    • 死亡届の提出
    • 葬儀や火葬の手配
    • 遺品整理
    • 住居の解約

    といった死後の事務を行う権限が一切ありません。


    「少しぐらいならやってくれる」は通用しない

    実務では、

    「後見人がついているから、亡くなった後も何とかしてくれるだろう」

    と期待されているケースをよく見かけます。

    しかし、後見人が契約外の行為を行うと、

    • 権限外行為
    • 善管注意義務違反
    • 損害賠償リスク

    につながるおそれがあります。

    特に専門職後見人は、「できないことはできない」と線を引く義務があります。


    では、死後のことは誰に頼めばいいのか?

    ここで必要になるのが、死後事務委任契約です。

    死後事務委任契約とは

    死後事務委任契約とは、
    自分が亡くなった後に必要となる事務を、あらかじめ第三者に依頼しておく契約です。

    具体的には、次のような内容を定めます。

    • 死亡届・火葬許可申請
    • 葬儀・納骨の方法
    • 病院・施設の費用精算
    • 賃貸住宅の解約・明け渡し
    • 遺品整理・行政手続き

    身寄りのない方にとっては、
    「死後の保証人」ともいえる重要な契約です。


    任意後見契約と死後事務委任はセットで考える

    エンディング対策として非常に重要なのが、

    • 任意後見契約
    • 死後事務委任契約

    別物として、しかしセットで準備するという考え方です。

    なぜなら、

    • 任意後見 → 生きている間の支援
    • 死後事務委任 → 亡くなった後の支援

    と、役割がはっきり分かれているからです。

    この2つを組み合わせることで、
    「生前から死後まで切れ目のない備え」が完成します。


    エンディング対策でよくある失敗例

    後見契約だけで安心してしまう

    後見制度は万能ではありません。
    死後の空白期間を埋める対策をしていないと、最終的に困るのは周囲の人です。

    口約束で済ませてしまう

    「何かあったらお願いね」という口約束は、
    法的には何の効力もありません。

    死後の事務は、必ず契約書で明確にしておく必要があります。


    行政書士がエンディング対策でできること

    行政書士は、

    • 任意後見契約
    • 事務委任契約
    • 死後事務委任契約
    • 遺言書

    を総合的に設計し、
    「その人らしい最期」を法的に支える専門職です。

    特に身寄りのない方の場合、
    一つでも抜けると大きな不安やトラブルにつながります。


    まとめ|死後のことは「後見人任せ」にできない

    • 後見制度は死亡で終了する
    • 後見人は死後事務を行えない
    • 死後事務委任契約が現実的な解決策

    「まだ先のこと」と思っている今こそが、
    実は一番落ち着いて準備できるタイミングです。

    エンディング対策や将来への不安を感じたら、
    どうぞお気軽に行政書士へご相談ください。

    あなたの想いを、確実に形にするお手伝いをいたします。

    行政書士吉村事務所のホームペー

  • 身寄りのない高齢者が本当に準備すべき3つの契約とは

    身寄りのない高齢者が本当に準備すべき3つの契約とは

    「もし倒れて入院したら、誰が手続きをしてくれるのだろう」
    「将来、判断力が落ちたときはどうなるのか」
    「亡くなった後のことまで、迷惑をかけずに済ませたい」

    身寄りのない高齢者の方、いわゆるおひとりさまから、こうした不安の声を多く耳にします。

    近年は「身元保証サービス」や「終身サポート」という言葉も増えましたが、
    本当に大切なのは、法的に有効な契約をきちんと準備しておくことです。

    この記事では、行政書士の立場から、
    身寄りのない高齢者が安心して老後を迎えるために、最低限準備しておくべき3つの契約を、わかりやすく解説します。


    なぜ「契約」による備えが必要なのか

    元気なうちは、「まだ大丈夫」「そのときになったら考えよう」と思いがちです。


    しかし、いざ体調を崩したり、判断能力が低下した後では、自分の意思で準備することができなくなります。

    また、身寄りがない場合、

    • 入院や施設入居の手続きをしてくれる人がいない
    • お金の管理を任せられない
    • 亡くなった後の手続きが宙に浮く

    といった問題が現実に起こります。

    これらを防ぐために必要なのが、元気なうちに結ぶ3つの契約です。


    ① 事務委任契約|「今は元気」なうちの支え

    事務委任契約とは、判断能力がしっかりしているうちから

    • 財産管理
    • 支払い代行
    • 各種手続きのサポート

    などを、信頼できる第三者に任せる契約です。

    事務委任契約でできること

    • 公共料金や家賃の支払い
    • 通帳・預貯金の管理
    • 介護サービスや施設との連絡調整

    「まだ後見制度を使うほどではないけれど、不安がある」
    そんな段階で活躍するのが事務委任契約です。


    ② 任意後見契約|判断能力が低下したときの備え

    任意後見契約は、将来、認知症などで判断能力が低下した場合に備える契約です。

    あらかじめ、

    • 誰に後見人になってもらうか
    • どこまでの権限を与えるか

    を自分で決めておき、判断能力が低下した段階で効力が発生します。

    法定後見との大きな違い

    家庭裁判所が選任する「法定後見」と違い、
    任意後見は「自分で選んだ人」に任せられる点が最大のメリットです。

    身寄りのない方にとって、
    信頼できる専門職と任意後見契約を結んでおくことは、将来の安心につながります。


    ③ 死後事務委任契約|亡くなった後まで責任を持ってもらう

    意外と見落とされがちですが、身寄りのない方にとって最も重要なのが、死後事務委任契約です。

    これは、本人が亡くなった後に行う、

    • 死亡届の提出
    • 火葬・納骨の手配
    • 賃貸住宅の解約
    • 遺品整理
    • 各種支払い・精算

    といった事務を、第三者に任せる契約です。

    成年後見契約は死亡と同時に終了するため、
    死後の手続きを任せるには、別途この契約が不可欠です。


    この3つの契約は「セット」で考えることが重要

    よくある誤解として、

    • 任意後見契約だけあれば安心
    • どれか1つ結べば十分

    と思われがちですが、これは危険です。

    実務上は、

    • 元気なうちは「事務委任契約」
    • 判断能力低下後は「任意後見契約」
    • 死亡後は「死後事務委任契約」

    と、人生のステージごとに役割が分かれています。

    この3つを組み合わせることで、
    生前から死後まで切れ目のないサポート体制を作ることができます。


    行政書士に相談するメリット

    これらの契約は、ひな形を使って作ればよいものではありません。

    財産状況、住まい、将来の希望によって、
    内容を細かく設計する必要があります。

    行政書士は、

    • 3つの契約を一体として設計できる
    • 誤解やトラブルを防ぐ文言を整えられる
    • 将来を見据えた現実的な提案ができる

    という点で、身寄りのない高齢者の法的サポートに適した専門職です。


    「今は元気」なうちの準備が、将来の安心をつくる

    • 事務委任契約:今の生活を支える
    • 任意後見契約:判断能力低下に備える
    • 死後事務委任契約:亡くなった後まで任せる

    身寄りがないことは、決して不利なことではありません。


    正しく準備すれば、自分らしい老後を選ぶことができます。

    将来に少しでも不安を感じたら、
    どうぞお早めに行政書士へご相談ください。

    あなたの人生設計に寄り添い、安心できる仕組みづくりをお手伝いします。

    行政書士吉村事務所のホームペー

  • 任意後見人が保証人になれない理由を行政書士が解説

    任意後見人が保証人になれない理由を行政書士が解説

    高齢者支援や終身サポートの現場で、次のような説明を耳にしたことはないでしょうか。

    「任意後見人がついていれば、身元保証人の代わりになります」

    一見すると、利用者に安心感を与える説明です。
    しかしこの言い方は、法律上も、厚生労働省のガイドライン上も不正確であり、場合によっては重大なトラブルやコンプライアンス違反につながります。

    この記事では、行政書士の立場から、

    • なぜ「任意後見人が保証人になる」と言ってはいけないのか
    • 厚生労働省のガイドラインとのズレ
    • 専門職・事業者が注意すべき説明のポイント

    を、一般の方にもわかる言葉で解説します。


    なぜこの説明が問題になるのか

    任意後見制度は、「判断能力が低下したときに備える制度」であり、非常に有用な仕組みです。
    そのため、善意から次のように説明してしまうケースが少なくありません。

    • 「後見人がいるから保証人はいりません」
    • 「任意後見人が身元保証の代わりになります」

    しかし結論から言うと、任意後見人は保証人にはなれません。
    これは「制度上できない」だけでなく、言い切って説明してしまうこと自体がリスクになります。


    保証人と任意後見人は役割がまったく違う

    保証人とは「本人とは別の第三者」

    病院や高齢者施設が求める保証人(身元保証人・連帯保証人)には、主に次の役割が期待されています。

    • 費用未払い時の金銭的保証
    • 緊急時の連絡先
    • 退院・退所時の身柄引き取り
    • 死亡時の遺体・遺品の引き取り

    つまり保証人とは、本人とは別人格の第三者として責任を負う存在です。

    任意後見人は「本人と同じ立場」

    一方、任意後見人は、本人の判断能力が低下した後に、

    • 本人に代わって契約を結ぶ
    • 本人の財産を管理する

    という役割を担います。法律上は本人の代理人であり、本人と同一の立場に立ちます。

    この時点で、両者は根本的に異なる存在であることがわかります。


    任意後見人が保証人になれない法的理由

    ① 「本人が本人を保証する」ことになる

    任意後見人が保証人になるということは、法律的には

    「本人が、自分自身の債務を保証する」

    のと同じ意味になります。これは論理的に成立しません。

    ② 利益相反行為にあたる

    任意後見人が保証人になると、

    • 支払いを請求する立場(保証人)
    • 支払いを判断・管理する立場(本人代理)

    を同一人物が兼ねることになります。
    これは利益相反行為として禁止されています。

    ③ 後見人は「自分の財産」で責任を負わない

    後見人の義務は、あくまで本人の財産の中から支払いを行うことです。
    後見人自身の財産で債務を保証する義務はありません。

    ④ 死後の責任を負えない

    保証人に期待される「死亡時の引き取り・清算」ですが、
    任意後見契約は本人の死亡と同時に終了します。

    この点からも、保証人の代替にはなり得ません。


    厚生労働省ガイドラインとのズレ

    厚生労働省は、医療機関・介護施設に対し、

    「身元保証人がいないことのみを理由に、入院・入所を拒否してはならない」

    と明確に示しています。

    また、後見人等に対して、保証人としての署名を求めないよう注意喚起も行っています。

    つまり厚労省は、

    • 後見人=保証人ではない
    • それでも後見人がいれば実務上の不安は軽減される

    という説明をしています。

    「任意後見人が保証人になる」と説明してしまうと、
    この公式見解と明確にズレてしまうのです。


    善意の説明が招くコンプライアンスリスク

    特に注意が必要なのは、次のような立場の方です。

    • 高齢者等終身サポート事業者
    • 福祉・介護関係事業者
    • 士業・相談支援員

    利用者に安心してもらおうとして、

    「保証人の代わりになります」

    と断定的に説明してしまうと、

    • 契約不適合責任
    • 説明義務違反
    • 後日のクレーム・紛争

    につながるおそれがあります。


    正しい説明はどうすべきか

    適切なのは、次のような説明です。

    • 任意後見人は保証人にはなれない
    • ただし、財産管理や支払いは確実に行える
    • 保証人が求められる場合は別の手段を検討する

    この整理をしたうえで、

    • 死後事務委任契約
    • 身元保証サービス
    • 社会福祉協議会等の支援事業

    組み合わせて提案することが、利用者にとっても事業者にとっても安全です。


    行政書士が果たせる役割

    任意後見・事務委任・死後事務委任は、
    説明の仕方一つで「安心」にも「トラブル」にもなる制度です。

    行政書士は、

    • 制度を正確に説明する
    • 契約内容を適切に設計する
    • 誤解を生まない書面を作成する

    ことで、利用者と事業者の双方を守ることができます。


    「言ってはいけない」には理由がある

    • 任意後見人は保証人にはなれない
    • 厚労省ガイドラインとも整合しない
    • 善意の説明が法的リスクになる

    制度を正しく使うことが、最大の利用者保護です。

    任意後見や終身サポートの説明・契約でお悩みの方は、
    ぜひ一度、行政書士にご相談ください。

    「安心と言える仕組み」を、法的に正しい形で整えるお手伝いをいたします。

    行政書士吉村事務所のホームペー

  • 後見人がいれば保証人はいらない?行政書士が誤解を解説

    後見人がいれば保証人はいらない?行政書士が誤解を解説

    高齢化が進む中、「身寄りがない」「頼れる家族がいない」という方から、成年後見制度に関するご相談が年々増えています。
    その中でも特に多いのが、次のような疑問です。

    「成年後見人がいれば、病院や施設の保証人は不要なのでは?」

    一見もっともらしく聞こえますが、この考え方は“半分正解で、半分間違い”です。
    誤解したまま手続きを進めると、入院や施設入居の場面で思わぬトラブルになることもあります。

    この記事では、行政書士の立場から、

    • 後見人と保証人の違い
    • なぜ後見人は保証人になれないのか
    • 実務上、どう備えるのが正解なのか

    を、一般の方にもわかりやすく解説します。


    そもそも「保証人」とは何をする人?

    病院や高齢者施設で求められる「身元保証人(保証人)」には、法律で明確に定義された役割があるわけではありません。
    しかし、実務上は次のような役割を期待されています。

    • 入院費・施設利用料が支払えない場合の金銭的保証
    • 緊急時の連絡先
    • 退院・退所時の身柄引き取り
    • 死亡時の遺体・遺品の引き取りや手続き

    つまり保証人とは、本人とは別の「第三者」として責任を負う存在です。


    成年後見人の役割とは?保証人とはまったく違います

    成年後見人(法定後見人・任意後見人)は、本人に代わって、

    • 財産を管理する
    • 契約などの法律行為を代理する

    ための存在です。法律上は、「本人と同じ立場」で行動します。

    ここが非常に重要なポイントです。

    保証人は「本人とは別の第三者」でなければならない一方、後見人は「本人の代理人」。
    この立場の違いが、後見人が保証人になれない最大の理由です。


    なぜ後見人は保証人になれないのか【4つの理由】

    ① 本人と同じ立場だから(論理的に矛盾する)

    後見人が保証人になるということは、
    「本人が、自分自身の保証をする」のと同じ意味になります。

    これは法律的にも、論理的にも成り立ちません。

    ② 利益相反行為になるため

    後見人が保証人になると、

    • 支払いを請求する立場(保証人)
    • 支払いを判断・管理する立場(本人代理)

    を、同一人物が兼ねることになります。
    これは利益相反行為として、法律上認められていません。

    ③ 後見人は「自分のお金」で支払う義務はない

    後見人の役割は、あくまで本人の財産の中から支払いを行うことです。
    後見人自身の財産で立て替えたり、責任を負ったりする義務はありません。

    ④ 死後の対応ができない

    病院や施設が保証人に期待する役割には、

    • 死亡時の手続き
    • 遺品整理
    • 未払い費用の精算

    などが含まれます。
    しかし成年後見契約は、本人が亡くなると終了します。

    そのため、後見人は原則として死後の事務を行うことができません。


    それでも「後見人がいれば大丈夫」と言われる理由

    ここで混乱が生じやすいのですが、厚生労働省は次のような考え方を示しています。

    「身元保証人がいないことだけを理由に、入院や入所を拒否してはならない」

    後見人がいれば、

    • 本人の財産から確実に支払いが行われる
    • 契約手続きが適切に行われる
    • 連絡・調整役が明確になる

    という点で、実務上の不安は大きく軽減されるのは事実です。

    ただしそれは、「後見人=保証人」という意味ではありません。


    本当に安心するために必要な備えとは?

    「後見人がいれば安心」と思っていた方ほど、事前の備えが重要です。

    特に身寄りのない方・おひとりさまの場合は、

    • 任意後見契約
    • 事務委任契約(財産管理)
    • 死後事務委任契約

    組み合わせて準備することで、入院・施設入居・死亡後まで一貫したサポートが可能になります。


    行政書士に相談するメリット

    これらの契約は、単体で作ればよいものではなく、
    ご本人の状況・財産・将来の希望に合わせて設計することが重要です。

    行政書士は、

    • 任意後見契約
    • 事務委任契約
    • 死後事務委任契約
    • 遺言書

    をトータルで整理し、将来のトラブルを未然に防ぐお手伝いができます。


    まとめ|「後見人がいれば保証人はいらない」は誤解です

    • 後見人は保証人にはなれない
    • 保証人がいなくても入院・入所は可能なケースがある
    • 本当の安心には契約の組み合わせが必要

    「まだ元気だから大丈夫」と思っている今こそが、実は一番の準備どきです。

    将来に不安を感じたら、どうぞお気軽に当事務所へご相談ください。
    あなたに合った最適な備えを、一緒に考えます。

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  • フリーランス保護法と何が違う?中小受託取引適正化法(取適法)との違いをわかりやすく整理

    フリーランス保護法と何が違う?中小受託取引適正化法(取適法)との違いをわかりやすく整理

    近年、日本の企業間取引をめぐる法規制は大きな転換期を迎えています。

    2024年11月に施行された「フリーランス保護法」に続き、2026年(令和8年)1月1日からは、従来の下請法を抜本的に見直した「中小受託取引適正化法(通称:取適法)」が施行されます。

    いずれも「取引の公正化」を目的とする法律ですが、守ろうとしている相手・規制の考え方・企業に求められる対応には明確な違いがあります。

    本記事では、フリーランス保護法と取適法の違いを整理し、発注側企業・中小事業者が実務上注意すべきポイントを行政書士の視点で解説します。


    1.最大の違いは「誰を守る法律か」──対象範囲の整理

    まず押さえておきたいのが、保護の対象となる事業者の違いです。

    フリーランス保護法の対象

    フリーランス保護法は、主に以下のような立場の事業者を対象としています。

    • 従業員を雇用していない個人事業主
    • 実質的に一人で事業を行う一人法人

    いわば、組織に属さず、交渉力が弱くなりがちな「個人の働き手」を守るための法律です。

    中小受託取引適正化法(取適法)の対象

    一方、取適法の対象はより広く、中小事業者全般に及びます。

    今回の法改正では、従来の「資本金基準」に加え、新たに「従業員数」による基準が導入されました。

    例えば、製造委託などの取引では、従業員300人以下の事業者が受託側として保護対象になるケースがあります。

    つまり、

    • フリーランス保護法:弱い立場にある「個人」の保護
    • 取適法:個人から中小企業まで含めた「事業者間取引全体の公正化」

    を目的としている点が、大きな違いです。


    2.「何のための法律か」が違う──理念と目的の違い

    両法律は似て見えても、その根底にある考え方は異なります。

    フリーランス保護法の理念

    フリーランス保護法は、

    • フリーランスが安心して働ける環境を整える
    • 不利益な取扱いや不透明な契約から守る

    ことを主眼とした法律です。 「働く個人の権利保護」という色合いが強いのが特徴です。

    取適法が目指すもの

    これに対して取適法は、単なる下請法の延長ではありません。

    法律の理念として掲げられているのは、

    • 元請・下請という上下関係の是正
    • 対等なパートナーシップの構築

    企業同士が一方的に支配・従属する関係ではなく、公正で持続可能な取引関係を築くことを目的としています。


    3.2026年施行の取適法で追加される厳しい新ルール

    取適法では、フリーランス保護法には見られない、あるいはより踏み込んだ規制が導入されます。

    一方的な価格決定の禁止

    受託者が原材料費や人件費の上昇などを理由に価格協議を求めたにもかかわらず

    • 協議自体を拒否する
    • 十分な説明なく価格を据え置く

    といった対応は、原則として禁止されます。

    60日以内の全額現金払いの義務化

    納品後60日以内に、全額を現金で受け取れる支払いが義務化されます。

    これにより、

    • 手形払い
    • 割引料が発生するファクタリング
    • 満額を受け取れない電子記録債権

    などは、実質的に禁止されることになります。

    特定運送委託取引も新たに対象に

    荷主が運送事業者に直接委託する特定運送委託も、取適法の規制対象に追加されました。

    物流・運送業界にとっても、極めて重要な法改正です。


    4.企業が今から進めるべき実務対応

    これら複数の法規制に対応するため、発注側企業には早期の実務対応が求められます。

    ① 取引先の再点検

    取引先が

    • フリーランス保護法の対象なのか
    • 取適法の「中小受託事業者」に該当するのか

    を正確に把握する必要があります。

    ② 契約書・支払条件の見直し

    契約書については、

    • 法律名・用語の更新
    • 手形払い条項の削除
    • 支払期日の明確化

    など、最新の法令に適合させることが不可欠です。

    ③ 交渉プロセスの「見える化」

    口頭発注や曖昧な合意を避け、

    • 書面・メールによる発注
    • 価格交渉の経緯を記録・保存

    する体制づくりが重要になります。


    まとめ|取引ルールの変化は「リスク」ではなく「信頼構築のチャンス」

    企業にとっては負担増と感じる面もありますが、見方を変えれば、取引先との信頼関係を深め、長期的なパートナーシップを築く好機でもあります。

    取適法対応や契約書の見直しに不安がある場合は、行政書士など専門家に早めに相談することをおすすめします。

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  • 資本金だけで判断するのは危険新設「従業員数基準」で自社が取適法の対象か確認を

    資本金だけで判断するのは危険新設「従業員数基準」で自社が取適法の対象か確認を

    2026年(令和8年)1月1日、日本の商取引における重要なルールである「下請法」は、「中小受託取引適正化法(通称:取適法)」へと名称・内容ともに大きく改正されます。

    今回の改正で、特に多くの企業が注意すべきポイントが、法の適用範囲を判断する基準として「従業員数」が新設されたことです。

    これまで「うちは資本金基準に該当しないから大丈夫」「下請法は大企業だけの話」と考えていた事業者様でも、新法では思いがけず“委託事業者”としての義務を負う可能性があります。

    本記事では、行政書士の立場から、取適法における従業員数基準の考え方と実務への影響を、できるだけわかりやすく解説します。


    なぜ「資本金」だけで判断するのは不十分なのか

    従来の下請法では、親事業者・下請事業者の区分は、原則として「資本金の額」によって判断されていました。

    しかし近年では、

    • 資本金は小さいが、従業員数が多い企業
    • 外注・業務委託を多用し、取引上の影響力が大きい企業

    といったケースが増え、資本金だけでは取引実態を正しく反映できないという問題が指摘されてきました。

    そこで新たに制定される取適法では、「元請・下請という力関係の是正」「対等なパートナーシップの構築」を理念に掲げ、資本金に加えて「常時使用する従業員数」が判断基準として導入されています。

    つまり、見た目の規模ではなく、実態に即した取引関係を重視する法律へと変わったのです。


    新設された「従業員数基準」の具体的な内容

    取適法では、委託する業務内容に応じて、適用基準が次の2つの区分に分かれています。

    ① 物品の製造・修理・特定運送・特定の情報成果物・役務

    (特定の情報成果物・役務:プログラム作成、運送、倉庫保管、情報処理など)

    • 委託事業者(発注側):従業員数 300人超
    • 中小受託事業者(受注側):従業員数 300人以下

    ※または、従来どおり資本金基準(3億円超・3億円以下など)に該当する場合

    ② 上記以外の情報成果物作成・役務提供

    • 委託事業者(発注側):従業員数 100人超
    • 中小受託事業者(受注側):従業員数 100人以下

    ※または、従来の資本金基準(1億円超・1億円以下など)に該当する場合

    ここで非常に重要なのが、「資本金」か「従業員数」のどちらか一方でも基準を満たせば、法律の対象になるという点です。

    たとえば、資本金が小さくても従業員が301人以上いる企業が、従業員100人の企業に製造を委託する場合、取適法が適用される可能性があります。


    「特定運送委託」の追加で一般企業にも影響が

    従業員数基準の新設とあわせて見逃せないのが、「特定運送委託」が新たに規制対象となった点です。

    これは、荷主が運送事業者に直接運送を委託する取引を指し、物流業界で問題となってきた

    • 長時間待機
    • 無償での附帯作業

    などを是正する目的があります。

    この改正により、運送業者ではない一般企業であっても、従業員数基準に照らして「委託事業者」としての義務を負うケースが増えることになります。


    施行までに企業が行うべき「3つの再点検」

    2026年1月の施行に向け、企業には早急な実務対応が求められます。

    ① 取引先の総点検

    自社の資本金だけでなく、常時使用する従業員数を正確に把握し、あわせて取引先(受託者)の規模も確認する必要があります。

    ② 契約書・社内規程の見直し

    法律名が「中小受託取引適正化法」に変更されるため、契約書の表記修正が必要です。

    あわせて、

    • 手形払いの廃止
    • 価格協議に関する条項の明確化

    など、最新の法令に適合した内容へ見直すことが重要です。

    ③ 社内体制・運用ルールの整備

    従業員数基準により新たに「委託事業者」となる場合、

    • 注文書の交付義務
    • 価格交渉・協議記録の保存

    といった義務が発生します。

    口頭発注の見直しや社内マニュアルの整備など、実務レベルでの対応が不可欠です。


    まとめ|「知らなかった」では済まされない改正です

    「中小受託取引適正化法」への移行は、単なる名称変更ではありません。

    取引の適用範囲を実態に即して大きく広げる重要な法改正であり、従来の下請法では想定していなかった企業も対象となります。

    これまで禁止されていた

    • 代金の減額
    • 買いたたき

    などは引き続き厳禁であることに加え、誠実な価格交渉プロセス60日以内の現金払いが、これまで以上に強く求められます。

    「自社は対象になるのか分からない」「契約書をどう直せばよいか不安」

    そのような場合は、取適法対応を含めた取引法務に精通した行政書士へ早めに相談することが、将来のリスク回避につながります。

    当事務所では、取適法に関する適用判断・契約書チェック・社内体制整備のご相談を承っております。

    どうぞお気軽にお問い合わせください。

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  • 取適法で手形払いは禁止?60日以内「全額現金払い」が企業実務に与える影響

    取適法で手形払いは禁止?60日以内「全額現金払い」が企業実務に与える影響

    2026年(令和8年)1月1日、日本の企業間取引における支払い慣行が大きな転換点を迎えます。
    同日施行される「中小受託取引適正化法(通称:取適法)」により、これまで広く使われてきた手形払いが、実務上ほぼ不可能となるためです。

    特に注目すべきなのが、「納品・役務提供完了から60日以内に、全額を現金で支払う義務」です。

    本記事では、取適法の中でも影響が大きいこの支払いルールに焦点を当て、企業が直面する実務上の変化と、今から準備すべき対応策を行政書士の視点でわかりやすく解説します。


    1.「60日以内・全額現金化」が意味するものとは

    取適法では、委託事業者(発注側)に対し、次のような支払いを義務付けています。

    「納品または役務提供の完了日から60日以内に、手数料などを差し引かれることなく、全額を現金で受け取れる支払い」

    これは単に「支払期限を守りましょう」という話ではありません。 支払い方法そのものが厳しく制限される点が、今回の法改正の最大の特徴です。

    事実上、禁止される支払い方法

    • 手形払い
      支払期日が長い手形は、60日以内に現金化できないため原則不可となります。
    • 電子記録債権(でんさい)
      手形と同様、期日まで満額を受け取れない仕組みは認められません。
    • 割引料を伴うファクタリング
      受託者側が割引料(手数料)を負担して早期現金化する方式は、「全額現金化」に反するため禁止対象となります。

    これまで「支払いは手形が当たり前」と考えてきた企業にとっては、資金繰り(キャッシュフロー)の抜本的な見直しが避けられません。


    2.なぜ今、ここまで厳しいルールが導入されるのか

    今回の取適法は、単なる下請保護を目的とした法律ではありません。 背景にあるのは、「対等なパートナーとしての企業間取引を実現する」という考え方です。

    従来の下請法では、立場の強い発注側が支払いを遅らせたり、事実上の金利負担を下請事業者に押し付けたりするケースが後を絶ちませんでした。

    そこで新法では、納品から2か月以内に、確実に・満額の現金を受け取れる環境を制度として整備し、中小事業者が安心して事業を継続できる基盤づくりを目指しています。

    つまり、取適法は「企業間取引の公正化」を本気で実現するための法律なのです。


    3.支払いルール以外にも広がる実務への影響

    取適法の影響は、支払い方法の変更だけにとどまりません。 企業実務全体を見直す必要があります。

    ① 価格交渉における説明責任の明確化

    原材料費や人件費の高騰などを理由に、受託者が価格協議を求めた場合、 発注側は理由を説明せずに価格据え置きを強要したり、協議自体を拒否することが禁止されます。

    ② 適用対象の拡大

    • 従来の資本金基準に加え、従業員数基準が新たに導入
    • 荷主が運送事業者に直接依頼する「特定運送委託」も新たに規制対象

    「うちは下請法の対象外だったから大丈夫」という認識は、通用しなくなる可能性があります。

    ③ 監視・執行体制の強化

    公正取引委員会に加え、各業界の主務大臣にも指導・助言権限が付与され、 違反に対するチェック体制はこれまで以上に厳しくなります。


    4.施行までに企業が取り組むべき3つの実務ステップ

    2026年1月の施行に向け、委託事業者(発注側)は早めの対応が不可欠です。

    ① 資金管理体制の再構築

    手形払いから現金払いへ移行した場合のキャッシュフローをシミュレーションし、 必要に応じて資金調達方法の見直しを行いましょう。

    ② 契約書・社内規程の改定

    法律名の変更に合わせ、以下の点を確認・修正する必要があります。

    • 手形払い条項の削除
    • 支払期限・支払方法の明確化
    • 価格協議に関する条項の追加

    契約書の未整備は、トラブルや行政指導の原因になりかねません。

    ③ 社内意識と運用の見直し

    口頭発注を改め、書面や電子データで交渉記録を残す体制を整えましょう。 また、振込手数料を受託者に負担させている場合は、将来的な規制も見据えた見直しが必要です。


    資金が巡る健全な取引関係へ

    取適法による「現金化の迅速化」は、ビジネスにおける血液(資金)の流れを正常化するための制度改革といえます。

    手形という「後回しの約束」ではなく、現金という「確かな対価」を速やかに循環させることは、 サプライチェーン全体の体力を高め、結果的に発注側企業の信用力向上にもつながります。

    2026年1月は、古い商慣習から脱却し、公正な取引を実現する新しいスタートラインです。 「まだ先の話」ではなく、「今から準備する」ことが、企業を守る最大のポイントとなります。

    取適法対応や契約書整備でお悩みの際は、行政書士へ早めにご相談ください。

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  • 「下請法」が消える日|2026年施行・新「取適法」をわかりやすく解説

    「下請法」が消える日|2026年施行・新「取適法」をわかりやすく解説

    2026年(令和8年)1月1日、日本の企業間取引を支えてきた法律が大きく生まれ変わります。
    長年親しまれてきた「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」は廃止され、代わって新たに

    「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」
    (略称:中小受託取引適正化法/通称:取適法)

    が施行されます。

    この改正は、単なる法律名の変更ではありません。
    「元請・下請」という固定的な上下関係を前提とした考え方そのものを見直し、企業同士が対等な立場で取引するという、実務に直結する大きな転換点です。

    本記事では、行政書士の視点から、新「取適法」がどのような法律なのか、
    どの企業に影響があり、何を準備すべきかを、できるだけわかりやすく解説します。


    1.なぜ「取適法」が生まれたのか|企業間取引の考え方が変わる

    従来の下請法は、「親事業者による不公正な行為を防止する」ことを主な目的としていました。
    しかし実務の現場では、

    • 価格交渉に応じてもらえない
    • 支払方法が複雑で資金繰りが不安定になる
    • 立場の弱さから声を上げにくい

    といった問題が根強く残っていました。

    そこで新法では、「弱い立場を守る」という発想から一歩進み、
    公正で透明性のある取引関係を社会全体で作ることが明確に打ち出されています。

    なお、2024年11月施行のフリーランス保護法が「個人」を主に対象としているのに対し、
    取適法は資本金・従業員数に応じた中小事業者全般を対象とする点が大きな特徴です。


    2.取引実務を変える「3つの重要ポイント」

    ① 価格交渉と支払いルールの厳格化

    新法で特に注目されているのが、「価格交渉のプロセス」と「支払方法」です。

    ● 一方的な価格決定の禁止

    受託側から、原材料費・人件費・物流費などの上昇を理由に価格協議を申し出た場合、
    委託側は誠実に協議する義務を負います。

    単に「今回は無理です」と結論だけを伝えるのではなく、
    なぜその判断に至ったのか、説明と交渉の記録が重要になります。

    ● 現金払いの原則化

    納品から60日以内に、全額を現金化できる方法で支払うことが義務化されます。

    • 手形払い
    • 割引料が差し引かれる電子記録債権
    • 実質的に満額受け取れないファクタリング

    これらは、実務上「現金に近い」と思われがちですが、
    新法では原則として認められません

    ● 遅延利息の拡充

    代金の支払い遅延だけでなく、
    不当な減額を行った場合にも遅延利息が発生する点は要注意です。


    ② 適用対象の拡大|「うちは関係ない」が通用しない

    取適法では、適用範囲が大きく広がります。

    ● 従業員数基準の新設

    これまでの下請法は、主に「資本金」で判断されていました。
    新法ではこれに加えて、従業員数も判断基準となります。

    「資本金が小さいから対象外」と思っていた企業でも、
    実は規制対象になる可能性があります。

    ● 運送委託も新たに対象

    荷主が運送事業者に直接依頼する「特定運送委託」も規制対象となります。

    長時間待機や無償作業といった、物流業界の課題是正が狙いです。


    ③ 執行体制の強化|チェックはより厳しく

    取適法では、

    • 公正取引委員会
    • 中小企業庁
    • 各業界の主務大臣

    が連携し、指導・助言・報告受付を行います。

    「知らなかった」「今まで通りやっていた」では済まされない体制へと変わります。


    3.2026年までにやるべき実務対応とは

    発注者(委託事業者)側の対応

    1. 取引先の再点検(従業員数・運送委託の有無)
    2. 契約書の見直し(法律名変更、手形条項削除、価格協議条項の明記)
    3. 社内体制整備(口頭発注の廃止、交渉記録の保存)

    受注者(中小事業者)側の対応

    原価資料や市場データをもとに、根拠ある価格交渉を行うことが重要です。

    トラブル時には、「取引かけこみ寺(旧:下請かけこみ寺)」などの相談窓口も積極的に活用しましょう。


    まとめ|取引の「OSアップデート」が始まる

    2026年1月1日、新しい取引の時代が始まります。
    契約書や社内ルールの整備は、早めに取り組むことで大きな安心につながります。

    取適法対応や契約書見直しに不安がある場合は、
    企業法務に強い行政書士へ早めにご相談ください。

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